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「乱れ雲」(1967)

【DVD発売中】

79点79
女性映画の巨匠として名高い成瀬巳喜男監督の遺作。夫を交通事故で亡くした若い美貌の人妻と、その加害者である青年との純愛を描いたメロドラマの傑作である。主演は前年の「ひき逃げ」(成瀬巳喜男監督)や「紀ノ川」(中村登監督)で演技面での成長を高く評価された司葉子と、やはり成瀬の「乱れる」(1964)で新境地を開いた加山雄三。司の上品で繊細な美しさと、加山の明朗な個性の組み合わせは絶品で、そのたたずまいだけで切ない思いをかきたてる。ヒロインを矢継ぎ早に不幸が襲うという状況設定には多少の無理があるものの、青年への憎しみが激しい愛へと転じる感情の動きの展開は、まさしく成瀬の独壇場だ。とりわけ印象深いのは、転勤で明日は西パキスタンへ発つという加山と司が湖畔で1日を過ごし、タクシーで宿舎へと向かうシーン。シネスコ画面が捉えたゆるやかに流れ去る車窓の外の風景と彼らの心が重なり合い、そこに見た交通事故の光景が忌まわしい過去をよみがえらせて二人を分かつまでが、無言のうちに語られる。武満徹の叙情的な音楽も忘れがたい。

あらすじ

江田宏と由美子は幸福の絶頂にいた。江田は通産省に勤めていて米国派遣の辞令を受け、妻の由美子は妊娠していることを知ったばかりだった。だが、江田が交通事故で死んだのは二人が祝杯をあげてから間もなくのことだった。告別式の日、江田を轢いた三島史郎が現われた。由美子は史郎に激しい憎悪を感じた。史郎の起した交通事故は不可抗力で、彼は無罪になったのだが、彼は勤め先の貿易会社の死命を制する通産省の役人を殺したため青森へとばされ、常務の娘との婚約も破棄された。史郎は毎月一万五千円を十年間由美子に支払うと約束したが、史郎にとって少しも義務のないこの契約は、由美子の姉文子が行なった。由美子には毎月決って送られてくるその金は、つらい思いにつながって暗い気持ちにさせられるものとなった。彼女は夫の両親から籍を抜かれ、その上、胎内の子も捨てねばならなかったのだ。やがて、勤めに出た彼女は、身を寄せていた文子の家で、彼女の美貌に義兄の目が光るのを感じると、義姉の勝子がとりしきっている十和田湖畔の実家に帰った。青森で史郎を訪れた由美子は文子がとり決めた契約を破棄した。彼女は事件のすべてを忘れようと思ってのことだが二人は何度か顔を合わせた。いつか二人はお互いに愛を覚えるようになったが、由美子は史郎に自分の前から去ってくれと頼んだ。ある日、史郎が西パキスタンへ転勤を命ぜられ、二人は別れの一日を湖畔で過ごした。由美子は幾度か史郎の激情に押し流されそうになった。その度に彼女を押しとどめたのは前夫の想い出だった。その由美子の心が急に史郎に傾いたのは史郎の発つその日だった。だが、二人は嶮しい山道で悲惨な交通事故を目撃した。その有様は、かつてのいまわしい想い出そのままに、二人を重苦しくつつんだ。由美子は決して史郎と結ばれないことを悟った。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1967年
製作国 日本
配給 東宝
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