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「刺青」(1966)

【DVD発売中】

74点74
女の情念と、その妖しい美しさを生涯通して描き続けた大映出身の鬼才・増村保造の美学のまさに頂点ともいうべき作品。谷崎潤一郎の有名な処女短編小説『刺青』を原作として新藤兼人がシナリオ化した。主演の若尾文子は、増村保造とは何本もコンビを組み、増村描く女性像になくてはならない存在となった。物語は手代と駆け落ちした質屋の娘が、悪人のたくらみにかかり芸者として売られる。刺青師に白い肌一面に巨大な女郎グモを彫られた娘は、男と女の欲望のうごめく世界に本能のうごめくまま生きていく……。冒頭、山本学が演じる刺青師が、薬で眠らせた若尾文子の肌に、丹念に女郎グモを彫り込んでいくシーンの妖気ただよう美しさは見事。そしてラスト、若尾文子の肌に彫られたクモが、娘の体に絡み付き、まるで呼吸でもするかのように血の中でうごめくシーンのあざやかな地獄絵は日本映画史上忘れられない名場面であろう。また、随所に増村保造独特の色彩感覚があふれ、オレンジ・赤・青などの原色を使った画面は“大映調”の真骨頂といえる。

あらすじ

外に雪が舞うある夜。質屋の娘お艶は、恋しい手代の新助と手と手をとり合って駈け落ちした。この二人を引きとったのは、店に出入りする遊び人の権次夫婦だった。はじめは、優しい言葉で二人を迎え入れた夫婦だったが、権次も所詮は悪党だ。お艶の親元へ現われ何かと小金を巻きあげ、あげくに、お艶を芸者として売りとばし、新助を殺そうとしていたのだ。が、そんなこととはつゆ知らぬお艶と新助は、互いに求め合うまま狂おしい愛欲の日々をおくっていた。しかし、そんなお艶のなまめかしい姿を、権次の下に出入りする刺青師清吉は焼けつくような眼差しでみつめるのだった。そして、とある雨の晩。権次は、とうとう計画を実行に移し、殺し屋三太を新助の下に差しむけた。だが、必死で抵抗した新助は、逆に三太を短刀で殺してしまった。ちょうどそのころ、土蔵に閉じこめられていたお艶は、刺青師清吉のために、麻薬をかがされ、気を失い、その白い肌一面に巨大な女郎蜘蛛の刺青をほどこされた。恍惚として見守る清吉の姿は、刺青の美しさに魂を奪われたぬけがらのようであった。やがて眠りから醒めたお艶は、この刺青によって眠っていた妖しい血を呼び起こされたように、その瞳は熱をおびて濡れていた。それからというものお艶は辰巳芸者染吉と名を改め、次々と男を酔わせていった。が、昔のやさしいお艶の姿を忘れきれない新助は嫉妬に身をやき、染吉と関係を持った男を次々と殺し、ついにある夜、短刀を持って染吉に迫った。だが新助には染吉を殺すことはできず、逆に染吉が新助を刺した。一部始終をかいま見ていた清吉は、遂にたえきれず自らが彫った女郎蜘蛛を短刀で刺し、自らも命を絶った。死んでいく染吉の顔には、すでに男をまどわした妖しい影はなく、優しいお艶の安らぎの顔があった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1966年
製作国 日本
配給 大映=大映京都
上映時間 86
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