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「西鶴一代女」(1952)

【DVD発売中】

86点86
敗戦後低迷を続けていた溝口健二が西鶴の『好色一代女』をもとに、全身全霊を打ち込んで完成させた彼の最高傑作。奈良の荒れ寺へ客にあぶれた街娼たちが集まり、グチを言いあっている。その中に厚化粧でも年は隠せないお春という女がいた。その夜、巡礼帰りの百姓たちの前に引きだされ、“こんな化け猫をおまえたちは買いたいのか“とさらし者になった彼女は、我知らず寺の羅漢堂に入っていく。居並ぶ五百羅漢を眺めやるうちに、羅漢像の一つ一つが過去の男たちに見えてくるのだった。こうして時代は一気にさかのぼり、彼女が御所づとめに出ていた13歳の時からの流転の生涯が綴られていく。様々な男たちと出会い、別れていくたびに不幸になっていくお春を通して、封建制度下に自我を通そうとした女の悲劇を優しく、そして苛烈に描ききっている。溝口一流の長回しが随所で効果を上げており、また巨大なセットの空間の広がりに圧倒される。田中絹代も一世一代といえる名演を見せた。

あらすじ

奈良の町はずれの荒寺の門前にたたずむ惣嫁と呼ばれる売女三人。その中に、老い疲れた顔を厚化粧にかくしたお春の姿もあった。乞食の焚火に明るんだ羅漢堂に並ぶ仏の顔に、お春は過去の幾人かの男の面影を思い浮かべるのだった。−−若く美しかった御所勤めの頃のお春に懸想した公卿の若党勝之介は、彼女をあざむいて寺町の中宿へつれ込んだところを、折悪しく役人にふみ込まれた。お春とお春の両親は洛外追放、勝之介は斬首に処された。宇治に移り真葛原の出振舞に踊ったお春の美しさを見込まれ、江戸松平家のお部屋様に取り立てられ、嗣子までもうけたお春であったが、側近の妬みに逢って実家へかえされ、お春の流転が始まった。島原の廓に身を売られ、田舎大尽に身受けされようとしたが、彼が偽金作りと判り、笹谷喜兵衛の家へ住込女中となった。それも前身が判ったことから喜兵衛の女房お和佐に嫉妬され追い出された。扇屋の弥吉の妻になり平和な生活に落着けたのもつかの間、弥吉の急死で、笹屋の番頭文吉の世話になったが、文吉がお春のために店の品を盗んだことが発覚、文吉につれられ駆け落ちして桑名で捕えられた。それ以来、宿屋の飯盛女、湯女、水茶屋の女、そして歌丘尼から、老いさらばえて、辻に立つ惣嫁とまでなり果てたのだった。ふと自分の名を呼ばれ我にかえったお春は、老母ともから、松平家の呼出しを告げられた。もしや自分の生んだ子がとの喜びも裏切られ、お春は卑しい女に堕ちた叱責を受け、永の蟄居を申渡されたばかりであった。やがて嵯峨の片ほとりに草庵を営む老尼の姿が見られた。お春であった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1952年
製作国 日本
配給 新東宝=児井プロ
上映時間 137
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