閉じるボタン

「足摺岬」(1954)

80点80
田宮虎彦の短編小説『足摺岬』『菊坂』『絵本』を新藤兼人が脚色、吉村公三郎が監督した作品。軍国主義の重圧が次第に強まる昭和初期。社会主義者の検挙にあいながらも自己の主張を曲げずに生きる若者を描く。田宮文学に特有の暗い叙情を見事に映像化。

あらすじ

昭和九年、冬。アカの嫌疑で投獄された苦学生浅井は上京した母のお蔭で釈放された。浅井の下宿する本郷菊坂近くの富士見軒には、学友緒方、毎日書きものをしている松木、女給さよ子をつれこんでマンドリンと嬌声に日を送る学生香椎、福井少年とその姉の八重などが居た。八重姉弟は兄が廟行鎮で捕虜になった事から、故郷に居たたまれず、母を四国の南端足摺岬近くの叔母にあずけて上京し、弟は新関配達に八重は近所の食堂で働いていた。ガリ版書きに広告取りに次々と失敗した浅井には、何時しか八重が生きる為の唯一の支えになっていた。ある日界隈に強盗が現われ、八重の弟が警察に引かれていった。無実の罪を問われた痛手は大きく少年は死をもって抗議し、傷心の八重は「一度是非いらして下さい」と云う言葉を浅井に残すと、足摺岬へ帰っていった。加うるに母の急死を知らされた浅井は、その夜二階で嬌声を上げる香椎を殴り、喀血した。すべてのものに突き放された浅井は、何もかも売り払うと汽車にゆられてようよう足摺岬へたどり着いた。しかし、死を決意して雨の足摺岬に立った彼も、どうしても死ねなかった。八重の姿が忘れられなかったのだ。八重の叔母の旅館でやさしく介抱してくれる八重に、彼は告白した。が、八重は既に隣村の有力者に嫁入りすることになっていた。切ない思いは浅井も八重も同じだが、もはやどうする事も出来なかった。しかし、八重と別れて足摺岬を旅立つ浅井の眼には、どんなことをしても生きようとする人間の決意が光っていた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1954年
製作国 日本
配給 近代映画協会
上映時間 108
チケット 前売りチケットを購入する