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「ひき逃げ」(1966)

68点68
交通事故で子供を殺された女の復讐劇。主演の高峰秀子の夫である、松山善三のオリジナル脚本を成瀬巳喜男が演出。交通戦争という社会問題を告発した物語展開には、松山の道徳観が色濃く反映している。良心の呵責にさいなまれ自滅する加害者役の司葉子が好演。

あらすじ

戦争直後、売春婦をしていた伴内国子は、心ある男に救われ結婚したが、今では夫を亡くし五歳になる一人息子武をたよりに、横浜の中華料理店で女中奉公に励んでいた。ところが、ある日武は、山野モーターズ重役柿沼久七郎の妻絹子が運転する自動車にひき殺された。絹子は彼女の若い愛人との情事の帰りであった。おりしも山野モーターズでは、会社の命運をかける新車売り出しの直前であった。当然、今、久七郎の妻絹子が自分の会社の車で事故を起したとなれば、新車売り出しの障害になるばかりか、久七郎自身の地位も危くなる。久七郎は妻のひき逃げをひたかくしにかくす一方、自分のおかかえ運転手菅井をまるめこみ、自首させた。事件は一応国子の弟弘二のはからいで示談にもちこまれ、落着した。むろん、こんなことで国子の心は晴れるはずもなかったが……。そんなある日、国子は、事故の現場で知りあった掃除婦の久子と再会し、その時事故を目撃していたという彼女から、ひき逃げした車の運転手が、女であったことを聞きだした。さっそく国子は久子を連れて再び警察をおとずれた。が、一度カタのついた事件を警察は再びとりあげようとはしなかった。こうして国子の悲しみは怒りに変っていった。意を決した国子は家政婦として柿沼家へのりこんだ。目的は、絹子がひき逃げした確証をつかみ、絹子の子供健一を事故死させ、自分が味わった悲しみを絹子にも味わせることだ。だが、確証はにぎったものの、国子の母性は、今ではすっかり、彼女になついた健一を殺すことはできなくなっていた。とはいうものの絹子を許すことはできない、ある夜、国子は、殺意を胸に絹子の部屋に忍びこんだ。が、意外にも、すでに絹子は、健一と共に紅に染まって死んでいた。罪悪感に悩まされたあげくの自殺であった。しかし、警察では、国子の行動に不審を持ち、拘留した。やがて、絹子の遺書が発見され、国子は釈放された。いきどころのない怒りと悲しみに、今は半狂乱となった国子は、地獄絵図を思わせる交通ラッシュの中に、むかえに出た弘二に抱きかかえられるようにして出ていくのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1966年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 94
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