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「鶴八鶴次郎」(1938)

86点86
第1回直木賞を受賞した川口松太郎の同名小説を映画化した成瀬巳喜男監督の名作。同年「藤十郎の恋」で再起した長谷川一夫と、溝口健二監督の「浪華悲歌」「祇園の姉妹」(1936)で女優開眼した山田五十鈴が主演している。物語は明治から大正初期にかけて人気の絶頂にあった新内の名コンビ・鶴八鶴次郎の愛情と芸道との葛藤を描く。芸の話となると互いに一歩も退かない二人の、想いを胸に秘めながらの喧嘩沙汰がもどかしく、芸人の厳しさを知った鶴次郎が、自らを犠牲にしても鶴八を幸福な家庭生活に収まるように仕向けるラストが切ない。風景のショットの連鎖などにサイレントの名残りを見せる演出が印象的である。

あらすじ

鶴八鶴次郎といえば大正の中頃へかけて、人気の高かった新内語りの一組。男の太夫に女の三味線弾きは珍らしくもあるが、その人気は八町飢饉の異名さえ生れる程。二人は表向き兄妹ということになっていたが、鶴八は先代の一人娘で弟子だった鶴次郎にとって主筋に当る。女ながら芸にかけては鶴次郎にも絶対譲らず、仲が良いのに喧嘩が絶えぬのは興行元の竹野、周旋屋の佐平達にとって頭痛の種。大入り札止めの名人芸を打上げた二人は大阪花月劇場への旅興行を機会に、高野山へ先代鶴八追善の法会に出かける。芸抜きの約束で仲の好い二人の姿。かねて恋仲だった弟子の鶴市とお新が、機を見て添わしてやる、という鶴次郎の好意をよそに駈落ちしても、二人は黙って見逃してやる。珍らしくしんみりした雰囲気の中で、鶴八が結婚話が持上っていると切り出す。相手は先代からの御ひいき、料亭上野伊予善の息子松崎敬二。嫁入りする以上、三味線を捨てるのは当然。芸一筋に生き続け、喧嘩ばかりで愛し合っていたことにも気付かなかった二人は初めてしっかり抱き合う。鶴次郎は、かねて老後に備えて寄席を作り、鶴八と晴れて夫婦になろうと考えていた。それに必要な金を鶴八は母の遺産といって持ち出す。ところがその金が、実は松崎から融通された金と知った鶴次郎は怒り、佐平の奔走も空しく鶴八は敬二の許に嫁入り、二人は本当に別れてしまった。二年の歳月が流れ、鶴次郎は場末の寄席に荒れた芸でその日を送り、一方堅気の女房として幸せな鶴八。こうした二人を口説いた佐平は、二年ぶりで新富座の舞台に鶴八鶴次郎を並べる。超満員の客に鶴八は芸に生きる歓びを味う。折も折、名優守田勘弥から帝劇に出演をとの申し出。喜ぶ鶴八。だが身を以って芸人のわびしさを知った鶴次郎は、鶴八が堅気の女房で暮してこそ女の幸福と信じ、心にもない雑言を吐いて鶴八と別れる。夜更けて鶴八が待ち受けた敬二の胸に身もだえして泣いている頃、居酒屋で酔いつぶれた鶴次郎は、遠く聞える新内の音にむせび泣いていた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1938年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 88
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