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「哀しみのベラドンナ」(1973)

72点72
フランスの歴史家ジュール・ミシュレの著書『魔女』を題材にして、イラストレーター・深井国の原画を、そのまま静止画として使った手法が注目を集めた。同時にセル画による動画も併用され、両者の間に違和感は残るものの、その野心的な試みがもたらした衝撃は、早すぎた傑作と呼ぶにふさわしい。映画史的にも貴重な一作といえるだろう。中世フランスの農民の妻ジャンヌが主人公。無慈悲な領主にもてあそばれた彼女は、夫からも裏切られる。奈落の底で彼女がつのらせる神への不信、それがジャンヌのもとへ悪魔を招き寄せる。そして魔女となった彼女は、妖しい魅力で男たちを従えていく。肉体の快楽を、むしろ中世の暗黒からの人間の解放と捉えたミシュレ。その主張のドラマ化は、やや難解と思われたためか、興行的には失敗に終わっている。テーマを抜きにしても独特のエロチシズムをたたえた作品だけに、再評価の時が来ることを期待したい。

あらすじ

中世フランスの美しい農村。熱い恋をして結ばれたジャンとジャンヌは、ささやかな結婚式のあと、領主のもとへ、貢ぎ物の金貨を献上しに行った。当時は、すべての快楽と苦痛は神の、またその化身の領主からの授けものと考えられていたのである。だが、ジャンヌの魅惑的な姿態と清楚な美しさは、領主や家来たちの欲情をかきたたせることになった。やがて、ジャンヌの無垢な肉体は、彼らのなぐさみものとなった。翌朝、ジャンヌは、見るも無惨な姿で城から帰って来た。ジャンの優しい抱擁も、いたわりの言葉もジャンヌの心をいやしはしなかった。それは、ジャンにとっても同じだった。ある夜、ジャンヌは糸紡ぎをしている時、しきりと何か、絶望の淵から救い上げてくれる力を、期待している自分に気ずいた。だが、それは悪魔たちの誘惑にちがいないと思ったジャンヌは、慌てて自分の考えを否定した。一方、村では飢饉が広まり、その上、領主の無暴な重税取り立てにより人人は苦しんだ。だが、ジャンヌとジャンの家だけは、ジャンヌの糸を紡むぐおかげで、税金を払っていたために、人々はジャンヌは悪魔の力にとりつかれていると噂するようになっていた。今では、税取り立て官に任命されているジャンは、戦争が始まったために戦費をかき集めるように領主に命令された。だが、金は思うように集まらなかったために、ジャンは領主の怒りを買い、左の手首を切り落されてしまった。この頃から、ジャンヌの魂には神への反逆の炎が静かに燃え上っていった。領主たち始め、ほとんどの男たちが出兵してしまった後で、ジャンヌは村の経済を一手に握ってしまった。戦争から帰って来て、人々のジャンヌへの尊敬ぶりに怒った領主は、神の座を犯す者として、ジャンヌに魔女の烙印を押した。村から逃れたジャンヌはとある無限に広がる原野に辿りついた。もう彼女を束縛するものは何もなかった……。その頃、ヨーロッパ全土を黒死病が襲った。ジャンヌがいた村も壊滅状態に近かった。だが、半死人のまま棄てられた何人かの人人は、ジャンヌがベラドンナという毒草から作った薬で救われた。それを聞きつけた村の人たちは、ジャンヌのもとへ押しよせた。やがて、ベラドンナの園では、神の重圧から解き放れたように、人々の楽しげな宴がくりひろげられた。一方、城にも黒死病はしのび寄った。領主はジャンを使って何とか、毒落しの製造法を聞き出そうとしたが、ジャンヌは堅なに拒否した。ジャンヌのふてぶてしさに領主は火あぶりの刑を宣告した。十字架にはりつけにされたジャンヌに火がはなたれた。思わずジャンは、刑場にとび出て領主に罵倒を浴びせた。その瞬間、槍がジャンの胸をつらぬいた。苦しげに虚空をつかむジャンの姿に、炎につつまれたジャンヌの表情がかすかに動いた。「ジャン……」といったのかもしれない。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1973年
製作国 日本
配給 ヘラルド=虫プロダクション
上映時間 89
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