閉じるボタン
【重要】システム障害発生につきまして

「人情紙風船」(1937)

画像

【DVD発売中】

83点83
第二次世界大戦は、内外の多くの映画作家の命を奪ったが、戦火に消えた最大の才能の持ち主の一人は間違いなく山中貞雄であっただろう。若い頃から多くの作品のシナリオを手掛け、23歳で処女作「抱寝の長脇差」を撮ってから、28歳で遺作となったこの「人情紙風船」まで、約5年間で日本映画史にその名を深く刻んだ。物語は、出征を前にした山中貞雄の厭世的な心理状態が反映されている。長い間コンビを組んできた脚本家の三村伸太郎のシナリオを得て、貧乏長屋に住む人々の日常を苦悩に満ちたタッチで描いた。髪結の新三は、町の財閥である白子屋の箱入り娘を誘拐する。新三と同じ長屋に住む海野又十郎は、妻と二人で仕官する日を夢見て貧しい暮らしに耐えている。だが又十郎は新三の誘拐に一役絡んでいたのだった……。山中貞雄本人は“こんな作品を遺作にしたくはない“と戦地に赴いたというが、“キネマ旬報ベスト・テン“では、第4位に堂々選ばれた。

あらすじ

江戸深川の貧乏長屋で老浪人が首つり自殺した。竹光なので切腹できなかったのだ。検分のため外出できない長屋の人々はくさる。長屋に住む髪結いの新三は、強欲な大家・長兵衛をそそのかして、故人への餞と称して大宴会を開く。新三の壁隣には、紙風船の内職を営む、浪人海野又十郎とその妻おたきが住んでいた。新三は自分で賭場を開き、地元を取り仕切る大親分弥太五郎源七の怒りを買っていた。源七の子分が新三を連れ出しに来たが、新三は隣の又十郎の部屋に逃げ込み難を逃れる。又十郎は亡き父の知人毛利三左兵衛に士官の途を求めるが、毛利はそれを迷惑に思い、色よい返事はしない。毛利は質屋白子屋を訪ねる。店主の娘お駒を家老の子息が見初めたためその縁を取り繕うとしていたのである。お駒はそんな自分の運命に耐えられなかった。彼女は店の番頭忠七と出来ていたが、忠七は何も出来ないでいた。白子屋の店先で毛利を待っていた又十郎だが、毛利の依頼で白子屋が差し向けた源七の子分らに叩きのめされる。それを救おうとした新三だが逆に子分らに捕まり、源七の元に連れて行かれる。散々絞られた新三だが、気に入らない源七の鼻をあかそうと再び賭場を開く。しかし源七の子分らに踏み込まれ一文無しとなる。又十郎は毛利が迷惑がっていることに気付いているが、他に仕官の手はなく、おたきにはそのことを伏していた。そして父の手紙さえ渡せれば毛利は受け入れてくれるに違いないと望みをおたきに話すのだった。だが毛利は手紙を受け取ることはせず、又十郎は長屋の側の居酒屋でわびしく酒を飲むのだった。その夜、金のない新三は元手を作るべく髪結いの商売道具を質に入れるため白子屋を訪ねるが、忠七にコケにされ憤慨する。翌日おたきは向島の姉に会いに出かける。その夜は縁日だったが大雨となる。そこでお駒を見かけた新三は昨夜の仕返しに彼女を誘拐する。雨の中毛利に懇願する又十郎だったが毛利は拒絶、二度と姿を見せるなと言い放し父の手紙を雨中に放り棄てる。雨に濡れながら呆然と立ち尽くす又十郎。帰宅した又十郎は新三がお駒を誘拐してきたことを知る。翌朝白子屋の命を受け源七らが新三を訪ね、お駒を帰すよう説得する。金を渡し穏便に済ませようとする源七に対して新三は、源七が頭を丸めて土下座すればお駒を帰すと言う。交渉決裂に憤慨しながら源七らは長屋を去る。実はお駒は隣の又十郎の部屋に匿われていたのだった。この騒ぎを聞き大家の長兵衛がやってくる。源七をコケに出来て満足したからこのままお駒を帰すつもりだった新三に対して、強欲な長兵衛は身代金をせしめようと提案、交渉は自分に任せろと白子屋に乗り込む。交渉は成立し50両の金をせしめた長兵衛がお駒を連れ戻しに帰ってくる。長兵衛は半分の25両を自分の手間賃と言い、呆れた新三はそれを飲む。まとまった金が入った新三は長屋の連中に酒を奢ると宣言。又十郎にも分け前を渡し、居酒屋に連れ出す。帰宅したおたきは長屋の女房達の立ち話から、又十郎が悪事に荷担したことを知る。居酒屋で又十郎はこの件で毛利が困っていたことを聞き、溜飲を下げるのだった。白子屋に戻ったお駒に対して忠七は駆け落ちしようと告げる。ほろ酔いで帰宅し寝入った又十郎をおたきは刺し殺し、自害する。新三は顔を潰された怒りに燃える源七と死を覚悟して対決する。翌朝又十郎とおたきの心中を見つける長屋の住民。長兵衛に伝えに向かう子供が落とした紙風船が溝にはまり静かに流されていくのだった…。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1937年
製作国 日本
配給 邦画マイナー=P・C・L=前進座
上映時間 86
チケット 前売りチケットを購入する