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「晩菊」(1954)

83点83
林芙美子の3つの短編小説『晩菊』『水仙』『白鷺』を一つにまとめて翻案した成瀬巳喜男監督の名作。それぞれのエピソードがユーモアのうちにほのかな哀感を漂わせて描かれる。とりわけ杉村春子扮する主人公が、以前燃えるような恋をした男の来訪を、最後の輝きを賭けて迎えるシーンには、男が金を借りに来たことを悟った杉村の心の動きが見事に表われて圧巻である。4人の中年女に、いずれ劣らぬ芸達者をそろえたことが作品に深みを加え、成瀬監督らしい色を出している。

あらすじ

芸者上りの倉橋きんは口の不自由な女中静子と二人暮し。今は色恋より金が第一で、金を貸したり土地の売買をしていた。昔の芸者仲間たまえ、とみ、のぶの三人も近所で貧しい生活をしているが、きんはたまえやのぶにも金を貸してやかましく利子をとりたてた。若い頃きんと無利心中までしようとした関が会いたがっていることを飲み屋をやっているのぶから聞いても、きんは何の感情も表わさない。しかし以前燃えるような恋をした田部から会いたいと手紙を受けると、彼女は美しく化粧して男を待った。だが田部は金を借りに来たのだ。きんは忽ち冷い態度になり、今まで持っていた彼の写真も焼きすてた。たまえはホテルの女中をしているが、その息子清は、おめかけをしている栄子から小遭いを貰っていた。清が手にとどかない所にいるような気がして、母親は悲しかった。雑役婦のとみには幸子という娘がいて、麻雀屋で働いていたが、店へ来る中年の男と結婚することに一人で決めていた。無視されたとみは、羽織を売った金でのぶの店へ行き酔いつぶれた。北海道に就職した清は、栄子と一夜別れの酒をくみ、幸子はとみの留守に荷物をまとめ、さっさと新婚旅行に出かけた。子供たちは母親のもとを離れたが、清を上野駅へ見送ったたまえととみは、子供を育てた喜びに生甲斐を覚えるのだった。きんはのぶから関が金の事で警察へ引かれたと聞いても、私は知らないと冷たく云いすてて土地を見に出かけた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1954年
製作国 日本
配給 東宝
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