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「生きる」(1952)

【DVD発売中】

81点81
ベルイマンの「野いちご」などとともに、老人を主人公にした世界的名作の1本として、観る者に深い感銘を与えずにはおかない作品。黒澤明の最高傑作と賞する人も多く、現在ハリウッドでリメイクを製作中。市役所の市民課長・渡辺勘治は、30年間無欠勤という模範的な役人だが、ある日自分が胃ガンで余命いくばくもないことを知る。早くに死に別れた妻との間の息子にも冷たくされ、絶望と孤独に陥った渡辺は、街へさ迷い出て飲み慣れない酒を飲む。“自分の人生とは一体何だったのか……“。しかし、元気な女性と出会い渡辺は人間が本当に生きるということの意味を考え始め、人生の最後に少しでも市民の役に立つことをしようと、下水溜りを改善して小公園を作ることに情熱を注ぐ……。黒澤明は、非人間的な官僚主義に対して痛烈に批判するとともに、人間が生きることについての哲学的な問題をも提示している。真面目一徹の渡辺が、老いて初めて夜の歓楽街を取り憑かれたようにさまようシークエンスの、めくるめく映像センスも忘れがたい。

あらすじ

某市役所の市民課長渡邊勘治は三十年無欠勤という恐ろしく勤勉な経歴を持った男だったが、その日初めて欠勤をした。彼は病院へ行って診察の結果、胃ガンを宣告されたのである。夜、家へ帰って二階の息子たち夫婦の居間に電気もつけずに座っていた時、外出から帰ってきた二人の声が聞こえた。父親の退職金や恩給を抵当に金を借りて家を建て、父とは別居をしようという相談である。勘治は息子の光男が五歳の時に妻を失ったが、後妻も迎えずに光男を育ててきたことを思うと、絶望した心がさらに暗くなり、そのまま街へさまよい出てしまった。屋台の飲み屋でふと知り合った小説家とそのまま飲み歩き、長年の貯金の大半を使い果たした。そしてその翌朝、買いたての真新しい帽子をかぶって街をふらついていた勘治は、彼の課の女事務員小田切とよとばったり出会った。彼女は辞職願いに判をもらうため彼を探し歩いていたという。なぜやめるのかという彼の問いに、彼に「ミイラ」というあだ名をつけたこの娘は、「あんな退屈なところでは死んでしまいそうで務まらない」という意味のことをはっきりと答えた。そう言われて、彼は初めて三十年間の自分の勤務ぶりを反省した。死ぬほどの退屈さをかみ殺して、事なかれ主義の盲目判を機械的に押していたに過ぎなかった。これでいいのかと思った時、彼は後いくばくもない生命の限りに生きたいという気持ちに燃えた。その翌日から出勤した彼は、これまでと違った目つきで書類に目を通し始めた。その目に止まったのが、かつて彼が付箋をつけて土木課へ回した「暗渠修理及埋立陳情書」であった。やがて勘治の努力で、悪疫の源となっていた下町の低地に下水堀が掘られ、その埋立地の上に新しい児童公園が建設されていった。市会議員とぐるになって特飲街を作ろうとしていた街のボスの脅迫にも、生命の短い彼は恐れることはなかった。新装なった夜更けの公園のブランコに、一人の男が楽しそうに歌を歌いながら乗っていた。勘治であった。雪の中に静かな死に顔で横たわっている彼の死骸が発見されたのは、その翌朝のことであった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1952年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 143
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