閉じるボタン

「姿三四郎〈1943年〉」(1943)

【DVD発売中】

62点62
黒澤明の監督デビュー作。戦時中のフィルム統制の中でようやくつかんだチャンスを、見事モノにした痛快娯楽作品。富田常雄の原作に発表と同時に飛びついた黒澤の彗眼は、時代に迎合することなく、のびのびと演出することに成功している。しかしながら、現在残っているプリントは翌1944年に上映されたカット版であり、戦後、消失した部分に説明字幕が挿入されて今日に至っている。明治15年、柔術を志した三四郎が矢野正五郎によって柔道の素晴らしさを知り、その門下に入り、幾多の試練ののち人間的に大きく成長し、一人前の柔道家になっていく。特筆すべきは試合のシーンの豪快さで、細かなカット割りやスローモーションが劇的な効果を上げている。また師の叱責をうけた三四郎が、池に飛び込み一夜を過ごした時、彼の目の前で開く蓮の花の美しさも印象に残る。ラストの決闘シーンは風吹きすさぶ荒天の中で撮影され、雲の流れや草のそよぎがモニュメンタルな雰囲気を醸し出している。

あらすじ

明治15年。姿三四郎は柔術家を志し、東京の神明活殺流の門馬三郎の門を叩く。入門初日の夜、門馬たち柔術家は新進の柔道家・修道館の矢野正五郎に対して夜襲をかけるが、簡単に撃退されてしまう。矢野の柔道に魅せられた三四郎は矢野に弟子入りする。月日は流れ、三四郎は「修道館の四天王」と称されるほど強くなるが、矢野は無頼の徒を相手に乱闘を演じた様を嘆き、精神的に未熟な三四郎を罵倒する。叱責に耐えかねた三四郎は庭の池に飛び込み、ここで死んでみせると叫ぶ。心配する兄弟弟子をよそに三四郎をそのままほっておく矢野。翌早朝、まどろむ三四郎の目の前で蓮の花が咲く。その荘厳さに三四郎は悟りを得、謙虚な男として生まれ変わったのだった。ある日修道館に柔術家・良移心当流の檜垣源之助が道場破りに訪れるが、稽古止めとなっていた三四郎は仲間がやられるのをただ見ているしかなかった。檜垣源之助の師は村井半助と言い、好人物であったが病に冒されていた。そして檜垣は村井の娘小夜に言い寄るが、彼女は檜垣の冷酷な性格を嫌悪する。しばらくして講道館に門馬三郎からの他流試合の申し込みが届く。稽古止めが解かれた三四郎は修道館の代表として、門馬と対戦する。試合が始まるがもはや門馬は三四郎の敵ではなく、三四郎に壁に投げつけられた門馬は死んでしまう。その様子を見ていた門馬の娘・お澄は悲鳴を上げ、激しい憎悪の目で三四郎を睨み付けるのであった。その憎悪の目に三四郎は取り憑かれてしまう。そんな中、柔術と柔道との決着を付けるため、警視庁武術大会が開催が決定した。柔道代表は三四郎が、柔術代表は村井が決定する。自分が代表に選ばれなかった檜垣は自分でなければ三四郎に勝てないと小夜に告げる。一方三四郎は未だ門馬を投げ殺したことの後悔から立ち直れていなかった。そんな三四郎を刺し殺そうとお澄が現れるが阻止される。三四郎は更に狼狽する。覚悟が出来ていない三四郎を叱責した矢野は、道場でひたすら三四郎に稽古を付ける。投げられながら三四郎は徐々に立ち直り始めたのだった。ある日矢野と共に神社に向かった三四郎は、社殿に祈る小夜を見かける。その一心不乱な祈りに心打たれた二人は邪魔をしないように立ち去る。その数日後の雪の日、三四郎は神社の石段で鼻緒が切れて困っている小夜と出会う。三四郎は手ぬぐいを裂いてすげてあげるのだった。それから幾度か石段で出会う二人。すっかり打ち解けた三四郎は、小夜が村井の娘で、父の勝利を祈っていることを聞きショックを受ける。自分がその対戦相手だと告げた三四郎は足早に駆け去る。警視庁武術大会当日、迷う三四郎を叱責する和尚。気を取り直した三四郎は会場に向かう。柔術と柔道との決着を見ようと会場は超満員だった。そして村井との試合が始まる。勝負は三四郎の勝利で決まり、負けた村井は戦ってくれた三四郎に感謝しつつ場外に運ばれていく。しばらくして三四郎は、試合の後病床に伏している村井を見舞う。村井はあの試合の素晴らしさと、勝った三四郎を賞賛する。そこに檜垣が現れ不穏な空気が流れる。檜垣から雌雄を決するための果たし状が三四郎に届く。場所は右京ヶ原。強風で荒れる草原で繰り広げられる死闘。三四郎は絶体絶命に陥るが、自分が生まれ変わるきっかけとなった蓮の花を思い出し、檜垣に逆転勝利するのだった。修道館の引越しの日、三四郎の姿は道場になかった。列車の客席には、旅に出る三四郎とそれを見送る小夜の姿があった。きっと戻ってくると三四郎は小夜に約束するのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1943年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 97
チケット 前売りチケットを購入する