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「浮雲〈1955年〉」(1955)

【DVD発売中】

74点74
成瀬巳喜男監督の代表作であり、世界映画史に燦然と輝く名作中の名作。原作は成瀬がその出世作「めし」(1951)以来、「稲妻」(1952)、「妻」(1953)、「晩菊」(1954)と立て続けに映画化して成功した林芙美子の同名小説。戦時中、赴任先のインドシナで愛し合った妻ある男を追って引き揚げてきたゆき子は、次から次へと女を変える相手の自堕落さに、一時は外人相手の娼婦にまで身を落とすが、別れることができない。二人で新しい生活を始めるべく旅立った小島でゆき子は男に見とられながら病死する……。起伏の激しい物語展開でありながら、成瀬の冷徹な対象凝視の姿勢は一貫しており、主人公を演じる高峰、森の緊張感みなぎる絡み合いを捉えて、その演出スタイルは一つの頂点に達したといえる。地の果てまでも男を追うヒロインは、映画が描き得た最も鮮烈な女性像の一つであり、女優・高峰秀子の名は永遠に映画史に刻まれた。小津安二郎の言葉“俺にできないシャシンは溝口の「祇園の姉妹」と成瀬の「浮雲」だ“はあまりにも有名。

あらすじ

幸田ゆき子は昭和十八年農林省のタイピストとして仏印へ渡った。そこで農林省技師の富岡に会い、愛し合ったがやがて終戦となった。妻と別れて君を待っている、と約束した富岡の言葉を頼りに、おくれて引揚げたゆき子は富岡を訪ねたが、彼の態度は煮え切らなかった。途方にくれたゆき子は或る外国人の囲い者になったが、そこへ富岡が訪ねて来ると、ゆき子の心はまた富岡へ戻って行った。終戦後の混乱の中で、富岡の始めた仕事も巧くゆかなかった。外国人とは手を切り、二人は伊香保温泉へ出掛けた。「ボルネオ」という飲み屋の清吉の好意で泊めてもらったが、富岡はそこで清吉の女房おせいの若い野性的な魅力に惹かれた。ゆき子は直感でそれを悟り、帰京後二人の間は気まずいものになった。妊娠したゆき子は引越先を訪ねたが、彼はおせいと同棲していた。失望したゆき子は、以前肉体関係のあった伊庭杉夫に金を借りて入院し、妊娠を中絶した。嫉妬に狂った清吉が、富岡の家を探しあて、おせいを絞殺したのはゆき子の入院中であった。退院後ゆき子はまた伊庭の囲い者となったが、或日落ちぶれた姿で富岡が現れ、妻邦子が病死したと告げるのを聞くとまたこの男から離れられない自分を感じた。数週後、屋久島の新任地へ行く富岡にゆき子はついて行った。孤島の堀立小屋の官舎に着いた時、ゆき子は病気になっていた。沛然と雨の降る日、ゆき子が血を吐いて死んだのは、富岡が山に入っている留守の間であった。ゆき子は最後まで環境の犠牲となった弱い女であった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1955年
製作国 日本
配給 東宝
上映時間 123
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