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「近松物語」(1954)

【DVD発売中】

85点85
近松門左衛門原作の『大経師昔暦』を脚色した溝口健二の名作。ふとした偶然で窮地に立たされた男女がやがて真実の愛に目覚め、捕らえられるが嘆くことなく刑場に惹かれていく。いかにも溝口らしい題材を様式的描写の中にパッショネイティブに描ききって、彼の代表作の一つとした。特に家内制手工業を営む経師屋の室内で展開される前半部分は、溝口演出の極致といえる見事なアンサンブル。また、溝口が常に批判してきた長谷川一夫の起用は、かつてない緊張感のもとに最高の演技を引き出すことに成功している。宮中の経巻表装を職とし、傍ら暦の刊行権をも握る“大経師内匠“の手代・茂兵衛は内儀・おさんの兄に銀一貫目を融通したことがばれ、主人の以春に空室に閉じ込められてしまう。おさんは茂兵衛を救うため、かねて夫が言い寄っていた女中のお玉と寝所を取りかえ動かぬ証拠を押さえようとする。ところが深夜忍んできたのはお玉に別れを告げに来た茂兵衛で……。戦前から溝口作品を担当してきた彼の盟友ともいえる水谷浩が美術を担当している。

あらすじ

京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許され、御所の役人と同じ格式を持っていた。傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさんは、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄道喜は借金の利子の支払いに困って、遂にその始末をおさんに泣きついた。金銭に関してはきびしい以春には冷く断わられ、止むなくおさんは手代茂兵衛に相談した。彼の目当ては内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りておこうというのであった。だがそれが主手代の助右衛門に見つかった。彼はいさぎよく以春にわびたが、おさんのことは口に出さず、飽く迄以春に追及された。ところがかねがね茂兵衛に思いを寄せていた女中のお玉が心中立に罪を買って出た。だが以前からお玉を口説いていた以春の怒りは倍加して、茂兵衛を空屋に檻禁した。お玉はおさんに以春が夜になると屋根伝いに寝所へ通ってくることを打明けた。憤慨したおさんは、一策を案じて、その夜お玉と寝所をとりかえてねた。ところが意外にもその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛であった。彼はお玉へ一言礼を云いにきたのだが、思いも寄らずそこにおさんを見出し、而も運悪く助右衛門に見つけられて不義よ密通よと騒がれた。遂に二人はそこを逃げ出した。琵琶湖畔で茂兵衛はおさんに激しい思慕を打明けここに二人は強く結ばれ、以後役人の手を逃れつつも愛情を深めて行った。以春は大経師の家を傷つけることを恐れて懸命におさんを求めた。だがおさんにはもう決して彼の家へ戻る気持はなかった。大経師の家は、こうして不義者を出したかどで取りつぶしになった。だが一方、罪に問われて刑場へと連れられるおさんと茂兵衛、しかしその表情の何と幸福そうなこと−−。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1954年
製作国 日本
配給 大映=大映京都
上映時間 102
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