「火まつり」(1985)

60点60
柳町光男が、作家・中上健次の脚本を得て、自然と人間、そして神が織りなす日本の土着的な神話の世界と現実を融合させた野心作。北大路が演じる達男は、熊野で木こりを生業とする男で、自らを山の女神の恋人と称するように、自然の呼吸と一つになった人間である。彼には、妻と二人の子供がいるが、かつての女・基視子が東京から流れてきて再び関係を結ぶ。しかし、基視子は土地の男を騙して東京へ逃げ、達男は火まつりの夜に一家を猟銃で殺し、自らも死ぬ。達男が山で嵐にみまわれ、彼が木を愛撫するとそれがピタリとやむといった不可思議な現象が、劇中にはさまれ、文明と日本の精神的なバック・ボーンが渾然となった様子が、柳町独特の骨太なタッチで描かれる。

あらすじ

前は海、後ろは山に挟まれた紀州・熊野の小さなその町は、海洋公園の建設が予定され、その利権で揺れている。町の人々は木こりと漁師で構成されているが、この両者はほとんど接触をもたない。木こりの達男は、自分を慕う青年・良太を連れ、漁師のトシオと付き合ったり、神の入江で泳いだり、榊で罠を作るなど、タブーをことごとく破る乱暴者だ。達男には妻と二人の子供がいるが、町に幼なじみの基視子が現われ交際がはじまる。達男の奔放な生き方に町の人々は顔をしかめているとき、海に重油が撒かれ、養殖のハマチが死んだ。みんな達男がやったと思っている。基視子は姉のスナックを手伝うことになり、土地ブローカーの山川をはじめ、町の若い男たちが彼女に付きまといだし、年寄りたちは他所者の彼女を冷ややかに見ていた。やがて基視子は山川から金をだまし取り、借金で人手に渡りかけていた新宮のスナックを取り戻した。達男、トシオ、良太たちは基視子の店に遊びに行く。暫くして達男たちは山に入った。晴れていた空は急に雲り、やがて激しい嵐が襲ってきた。良太や仲間たちは下山するが、達男はひとり残った。雲の流れ、木々の揺れる音、川のせせらぎの音の中で、達男は何か超自然的なものを感じる。山の神の声を聞いたのかもしれない。山は晴れ、達男は下山する。数日後、年に一度の“火まつり”が行なわれ、達男は暴れまくった。達男の家で、公園建設による土地問題について親族会議が開かれることになった。火まつり以来、穏やかだった達男は、猟銃を用意すると、母、妻、姉、子供たちを次々と射ち殺し、自分の口に銃口を入れると、足で引き金を引いた。静寂な町に銃声が響きわたる。その夕方、二木島の入江はタ陽で金色に染められ、撒かれた重油の中にハマチが浮いていた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1985年
製作国 日本
配給 プロダクション群狼
上映時間 126
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