「悲しみは女だけに」(1958)

50点50
尾道で飲食店を開いている政夫のもとに、姉の秀代がアメリカから帰ってきた。実は彼女は30年前に結納金目当てで、とある家に身売りをされていた。やがて、秀代の財産を狙った一族のいさかいが始まり……。劇団民芸が上演した新藤兼人の戯曲『女の声』を、新藤自身が舞台的手法も取り入れて脚色・監督している。

あらすじ

−−尾道。船員相手のあいまい飲食店“波千鳥”の主人政夫の、姉の秀代がアメリカから三十年ぶりに歸ってきた。政夫の後妻くに子、先妻の子浩、芳子や秀代の妹春江が、迎えに集った。浩は岡山の鉄道局に勤めるサラリーマン。女房子がある。芳子は比島人のボクサーと結婚し、子供が一人ある。後妻のくに子を馬鹿にし、母と呼ばない。春江は産婆で、原爆に会ったが生き残り、再婚している。秀代を囲んで一同が向い島の両親の墓へ詣でた後、政夫の長女道子が半年ぶりに神戸から帰ってきた。その夜、盆踊りの稽古ばやしの聞こえる奥座敷で、秀代は皆にアメリカでの苦労を話した。秀代は、傾きかけた家のために、六千円の結納金目当てで、見知らぬアメリカ移民の花嫁として渡米したのだ。が、帰ってみると、家屋敷はすでに人手に渡り、何のために、ずっと送金していたのか判らなかった。その弁解を浩がし、道子が冷かし、政夫がやめろとどなり、一座は気まずく沈黙した。浩も芳子も秀代のアメリカ土産を期待していた。浩は三十万の金を、芳子は家の建築費を。道子は西宮の岸本という男とブラジルへ行くつもりだった。彼女の最初の夫は、日本の降伏の当日に戦死、それからは男から男への荒れた生活が続いていた。政夫がやはり敗戦の日、二十年勤めた警察をやめた時から、一家の気持はばらばらになっていた。秀代はくに子との散歩から帰って来ると、一同にアメリカ土産を渡すと云った。が、それは、なんとアメリカの絵葉書だった。−−絵葉書、−−秀代はアメリカの死んだ夫を思いだした。彼女は死んだ母のことも思い出し、その偉さを皆に話す。道子がそれをさえぎって云った。おばさんの母さん、自殺したんだよ。アメリカにやることで家が立直るかと思ったのだが、借金は続々と出て来た。母は秀代の苦しみを分けて貰おうと、一週間何も食べずに死んだ。−−こういう女の声が秀代に聞えた。道子は訪ねて来た岸本を追い返す。先妻の千代子が月々の慰謝料がたまったのを払えとやってきた。秀代はくに子の頼みで全財産の五万円を差し出す。道子は父にはくに子がいる、安心したと岸本のもとへ帰る。浩や春江もスカッとして引き揚げる。自分の無力に酔いどれて帰ってきて泣く政夫を、秀代は母親のようにあやしてやった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1958年
製作国 日本
配給 大映東京
上映時間 106
カテゴリ 人間ドラマ
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