「さらば箱舟」(1982)

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69点69
1983年5月に死去した寺山修司の遺作。架空の村を舞台に、いとこ同士が結婚すると豚のシッポの生えた子供が生まれるという、タブーを犯して一緒になった捨吉とスエの運命を縦糸に、封建的な村落共同体が文明の波をかぶって近代化へと脱皮していく過程を横糸にして織り成された一大叙事詩。ロケ地には沖縄が選ばれ、南国の陽光の中で寺山一流の幻想的、呪術的な映画詩が展開する。実はこの作品は当初ガルシア・マルケスの『百年の孤独』の映画化として企画されたという経緯があるが、トラブルの末、紛れもない寺山ワールドとして見事に完成した。入院の要請を断って撮影を強行した寺山の執念が結実した作品である。

あらすじ

老人と、少年・本家の時任大作が村中の柱時計を盗んで穴に埋めている。数年後、大作は本家の主人となっていた。ある日、いとこ同士である分家の捨吉とスエが結婚した。村には、そうした血統の二人が交じわると犬の顔をした子供が生まれるので、結婚を禁じるというタブーがあった。それを犯そうとする娘のことを案じたスエの父は、彼女に蟹の形の貞操帯をつけ性生活を持つことができぬようにしてしまう。捨音とスエは、何とかしてそれを外そうと焦るが外れない。夫婦生活が持てぬことから、村では捨吉が不能だという噂が広まる。大作は捨吉に女中テマリを抱くのを見せつけたりする。ある朝、皆の前で大作に不能と嘲け笑われた捨吉は、カッとして彼を刺し殺してしまう。捨吉は、スエを連れて村を逃げ出す。しかし、一晩中さまよい歩いて漸く見つけた空家に泊まった翌朝、二人はそこが同じ我が家であったことに気づいた。やがて捨吉は大作の亡霊を見るようになる。そして、徐々に彼は、物の名前を忘れていく。狂気が兆してきたのだ。本家に先代の双子の兄弟の娘だというツバナが、子供・ダイを連れて住みついた。ある日、村の空地にある穴にダイが落ちた。そして、這いあがってきた時には大人になっていた。彼はテマリを姦す。スエが鋳掛屋から買った時計を見つけた村人たちは、時計をこわしにきた。襲いかかった捨吉は、頭を一撃され死んだ。その夜、スエの貞操帯が外れた。村に、急激に文明の波が入り込んできた。村を出て行く者が増え、ダイもテマリと一緒に隣町に移って行った。ある朝、二年前に本家のお金を盗んで逃げた分家の米太郎が車に乗って戻って来た。彼は本家の壁から金貨を見つけた。それを作男ズンムが、村中にふれまわるがどの家も空家となっていた。誰もいなくなった村で、スエが花嫁衣装を着て空地の穴へ投身した。百年後、かつて空地だったところに、鋳掛屋が三脚付写真機を組み立てている。穴はなくなっている。そして、現代の服装をした下男アダの呼びかけに皆が記念撮影をしに集まってくる。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1982年
製作国 日本
配給 ATG=人力飛行機舎=劇団ひまわり
上映時間 127
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