「お引越し」(1993)

72点72
独創的な映像世界を開拓し続ける相米慎二の長編10作目。レンコは気の強い11歳の少女。彼女の両親はお互いの生活がかみ合わずに、離婚を前提とした別居を始める。はじめのうちは家が二つできたと喜んでいたレンコだが、自分勝手なことばかり言って、いがみ合う両親の姿を見ているうちに納得できないものを感じるようになる。家族の絆をとり戻そうと、以前行ったことのある琵琶湖畔への旅行に両親を無理矢理連れ出したレンコは、父母の間の溝の深さを思い知るが……。撮影に「クッキー・フォーチュン」「アフターグロウ」などアメリカ映画界で活躍するカメラマン、栗田豊通を迎えたことで画面もより厚みを増し、これまで以上の完成度を持った相米ワールドが展開する。特にラスト近くで祭りの中を少女がさまよう幻想的ともいえるシーンの美しさは圧倒的。またレンコ役の田畑智子の、新人離れした自然な演技と存在感にも注目したい。

あらすじ

小学六年生の漆場レンコは、ある日両親が離婚を前提しての別居に入り父ケンイチが家を出たため、母ナズナとともに二人暮らしとなった。最初のうちこそ離婚が実感としてピンとこなかったレンコだったが、新生活を始めようと契約書を作るナズナや、ケンイチとの間に挟まれ心がざわついてくる。同じく両親が離婚している転校生のサリーの肩を持っては級友たちと大喧嘩したり、クラスメイトのミノルと話すうち思いついた、自分の存在を両親に考えさせるための篭城作戦を実行しかけてみたり。家でも学校でも行き場のなさを感じたレンコは、昨年も行った琵琶湖畔への家族旅行を復活させればまた平和な日々が帰ってくるかも知れないと、自分で勝手に電車の切符もホテルも予約してしまう。ホテルのロビーでレンコとナズナが来るのを待っていたケンイチは、もう一度三人でやっていきたいと語るが、その態度にナズナは怒る。その場を逃げ出したレンコは不思議な老人・砂原に出会う。砂原との温かいふれあいに力を得たレンコは、祭が最高潮を迎え、群集で賑わう中をひとりでさまよううち、琵琶湖畔で自分たち家族のかつての姿を幻視する。かつての幸福だった自分に向けて『おめでとうございます』と大きく手をふるレンコ。夏も終わり、レンコにとって、ケンイチやナズナにとって新しい風が吹きこもうとしていた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1993年
製作国 日本
配給 讀賣テレビ放送
上映時間 124
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