「乱」(1985)

【DVD発売中】

72点72
シェイクスピアの『リア王』を原案に、これを戦国時代の毛利3兄弟の話とダブらせて描く、黒澤明監督の豪華絢爛たる戦国絵巻。製作費26億円という数字は日本映画としては超巨大予算のため日・仏合作作品とせざるを得なかった。しかし、その美術や衣装が素晴らしく、黒澤明の力強く清洌な演出とともにこの作品に崇高なる気品を与えている。ことにワダエミがデザインした衣装の美しさは同年のアカデミー衣裳デザイン賞を授与されるに至った。年老いた一文字家の主・秀虎が3人の息子に家督を譲り、城を一つずつ与えて引退すると宣言したところから起こる息子たちの反逆と骨肉の争い。やがて秀虎は発狂し、3人の息子は次々と死んでいく。美しく荘麗なる悲劇。戦闘シーンを敵対味方の血わき肉おどるアクションドラマにせず、次々に殺りくされる無名兵士の地獄絵として演出したところに、人間の愚かさへの老匠の祈りに似た視線がうかがえる。

あらすじ

過酷な戦国時代を生き抜いてきた猛将一文字秀虎は七十歳を迎え、家督を三人の息子に譲る決心をした。「一本の矢は折れるが、三本束ねると折れぬ」と秀虎は、長男太郎は家督と一の城を、次郎は二の城を、三郎は三の城をそれぞれ守り協力し合うように命じ、自分は三つの城の客人となって余生を過ごしたいと告げた。隣国の領主藤巻と綾部もこれには驚いた。しかし、末男三郎は三本の矢を自分の膝に当てて無理矢理へし折り、父秀虎の甘さをいさめた。秀虎は激怒し、三郎と重臣の平山丹後の二人を追放した。藤巻はその三郎の気性が気に入り、藤巻家の婿として迎え入れることにした。一方、太郎の正室楓の方は、秀虎が大殿の名目と格式を持っていることに不満を抱き、太郎をそそのかして親子を対立させた。実は楓の方は親兄弟を秀虎に滅ぼされた上、一の城もとりあげられているという過去をもっていた。太郎の態度に怒った秀虎は一の城を飛び出して二の城へ向かったが、二の城の次郎とその重臣、鉄、白根、長沼の野望は一の城を手中にすることにあったため、秀虎は失意のうちに三の城へ向かわざるを得なかった。だがここにも悲劇は待ちうけていた。太郎と次郎が軍勢を率いて秀虎を攻めてきたのだ。三の城は陥落、秀虎の郎党、侍女たちは全員討死し、太郎も鉄の鉄砲に狙い撃たれて死んだ。秀虎はこの生き地獄を目の当りにして自害しようとしたが太刀が折れて果たせず、発狂寸前のまま野をさまよい歩く。夫の死を知らされた楓の方は一の城に入った次郎を誘惑、正室の末の方を殺して自分を正室にするよう懇願した。その頃、藤巻の婿になった三郎のもとに、秀虎と道化の狂阿彌が行くあてもなくなっているという知らせが丹後から届いた。三郎は即座に軍を率いて秀虎救出に向かい次郎軍と対峙した。それを見守る藤巻軍と、あわよくば漁夫の利を得ようとす綾部軍。三郎は陣を侍大将の畠山にまかせ、丹後、狂阿彌と共に父を探しに梓野に向かった。果たして秀虎はいた。心から打ちとけあう秀虎と三郎。が、その時一発の銃弾が、三郎の命を奪い、秀虎もあまりのことに泣き狂い、やがて息絶えた。そして一の城は綾部軍に攻め込まれ、落城寸前だった。一文字家を滅ぼしたのは楓の企みだったとして、鉄は楓を一刀のもとに斬り殺した。梓野では、秀虎と三郎の死体を運ぶ行列が続き、彼方には以前秀虎が滅した末の方の生家梓城の石垣だけが見えている。その石垣の上には以前秀虎に命と引きかえに両眼をつぶされた末の弟の鶴丸の姿があった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1985年
製作国 日本
配給 ヘラルド・エース=仏/グレニッチ・フィルム・プロダクション
上映時間 162
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