「おかあさん」(1952)

83点83
全国の小学生が書いた作文に着想を得た水木洋子のオリジナル脚本を成瀬巳喜男が演出した名作。都会の下町に暮らす一家が世帯主である父親を病気で亡くし、母を中心に困難な状況を生きる姿を綴っている。導入部における作文の朗読のようなナレーションによって物語は長女の視点をとり、日常の小さな出来事や人々の微妙な心の揺れが、思春期の少女らしい鋭敏さで細やかに捉えられる。父親の死、里子へ行く次女との別れなどの不幸な事件をも劇的な誇張を排して淡々と描く成瀬監督の作風は、その繊細さゆえに豊かな情感を生み出し、登場人物への親愛の情をかきたてられずにはおかない。

あらすじ

戦災で焼け出された洗濯屋の福原一家は、父が工場の守衛、母は露店の飴売り、娘の年子はキャンディ売りに精を出したおかげで、やっと元のクリーニング屋を開くことができた。長男の進は母に会いたい一心から病気の身で療養所を逃げ出してきたために死んでしまったが、店は父の弟子であるシベリア帰りの木村のおじさんが手伝ってくれることになり、順調なスタートを切った。年子が近所のパン屋の息子信二郎と仲良しになった頃、病気で寝ていた父が死んだ。母は娘二人と引き揚げ者の甥哲夫を抱え、木村の手ほどきを受けながら女手一つで馴れない店を切り回すことになった。木村と母の間についてあらぬ噂が立っていることを信二郎から聞いた年子は、娘心に思い悩んだが、妹の久子を他家に嫁にやる話まで出るようになると、女の腕のかよわさをしみじみと悟らざるを得なかった。事実久子はもらわれていき、哲夫もやっと一人前の美容師になった母親の元に戻されることに決まって、一家は最後の楽しいピクニックに出かけた。やっと母も一人立ちできるようになり、木村は自分で店を出すために去っていった。母一人娘一人残った福原家では、新しい小僧も迎え、ようやく将来への安定した希望も湧いてきたのだったが−−年子の心には、母は本当に幸せなのだろうか、とかすかな憂いが残って消えないのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1952年
製作国 日本
配給 東宝=新東宝
上映時間 98
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