「人でなしの恋」(1995)

64点64
江戸川乱歩の短編小説の映画化。昭和初期、美術学校に通っていた京子は初恋の講師と結婚し、幸せな日々を送っていた。しかし婚礼から半年たったある夜、目を覚ますと夫の姿が見当らない。夜な夜な床を空ける夫を不信に思い後をつけて土蔵に行くと、そこからは夫と女の激しい吐息が聞こえてくるのだった……。CMディレクター松浦雅子の監督デビュー作。女性ならではの繊細なタッチで愛に戸惑う切ない女心をしっとりと描く。

あらすじ

車椅子を押した一人の老夫人が、落ち葉を踏み締めて歩いて行く。その老夫人・門野京子は、ぽつりぽつりと夫と過ごした短い年月のことを回想し始めた。昭和5年の冬、美術学校の生徒だった京子は講師の門野にひそかな恋心を抱いており、二階堂先生の仲立ちもあって門野家へ嫁ぐことが叶った。それからの彼女は何をしても怖いくらい幸せで、大きな屋敷の二人暮らしも淋しくはなかった。ところが、婚礼から半年経った頃、京子は門野が夜中にこっそりと床を抜け出し、屋敷の裏にある蔵へ出向くことに気づいた。変だとは思いつつそのことに触れない京子に、門野は自分と別れて欲しいと告白するのであった。絶望の縁に立たされた京子は、ある夜、門野の後をつけて蔵へと忍んで行き、そこで門野ときりこと呼ばれる誰かとの睦言を聞いてしまう。夫には他に愛する女性がいたのだ。それからは屋敷は死んだように生気を失い、京子は一生愛されないと宣告されながらも家に置いてもらうことになる。だがある日、蔵の禁断の階上へ上がった京子は、そこで門野が蓿の人形を愛撫する姿を見てしまう。夫の寵愛を一身に受けているのが人形だったことにショックを受けた京子は、嫉妬心からその人形の首を落とすのだった。夜、床を並べた京子に、門野は「知らない土地を旅するようで、お前が怖かった」と告白する。そしてその明け方近く、門野は床を抜け出し蔵の中で自殺してしまう。傍らには、まるで京子を見据えるような目をした人形が横たえられ、京子の耳に「私の勝ちです」という声が響くのだった。それから50年、秋の昼下がりの庭には、今も門野夫人として屋敷を守っている京子の、門野の残したカーディガンを車椅子に乗せて散歩する姿があった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1995年
製作国 日本
配給 松竹=バンダイビジュアル
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