「鯨神」(1962)

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今や官能小説の雄ともいうべき宇能鴻一郎の若き日の芥川賞受賞作『裁かれる越前守』の映画化。メルヴィルの『白鯨』を思わせる骨太な作品で、日本では育ちにくいジャンルを、大映時代劇の中堅・田中徳三が正攻法で演出し、一応の成果を得たのは注目に価する。

あらすじ

漁師たちは、悪魔の化身のようなその巨大な鯨と長い間たたかい続けたが、何百人もが命を失った。今では「鯨神」と呼んで恐れおののき、誰一人近づこうとしない。しかし、九州和田浦に生まれたシャキは、祖父も父も兄も殺され、自分の手で鯨神をたおすことを誓った。村の鯨名主は鯨神を殺した者に、一人娘トヨと家屋敷田地名跡を与えると宣言した。シャキのつぎに「おれも−−」と名乗りあげたのは、紀州からきたばかりの男である。シャキをひそかに愛するエイは、シャキがトヨを嫁にもらうのが心配だが、シャキは鯨神をたおすだけが目的なのだ。木枯吹きすさぶ冬、長崎へ出て医者になろうと志すカスケがきて、シャキの妹ユキを嫁にくれという。シャキが反対しなかったのは、死ぬつもりだからである。梅の花の咲いた日、エイは海岸の洞窟で赤ん坊を生んだ。自分の子でないと知りながらも、シャキは父親になる決心をした。心からエイを愛していたのだ。やがて鯨神が和田浦へ向って全速力でやってくるという通信が入った。船出の前日、紀州男は「俺に一番刃刺しをゆずれ」と迫るが、シャキは応じない。九艘の勢子船と二艘の双海船は一せいに浜を出て、鯨神に向った。「銛をうて!」の合図に十数本の銛が背中にぶちこまれた。傷ついた鯨神は猛烈なスピードで沖に泳ぐ。そのとき、紀州男が血の海に飛び込んだ。鯨名主はシャキを抱きとめた。紀州男は鯨神の背に飛び乗ると、槍で急所をえぐった。苦しまぎれに潜った鯨神が再び浮上したとき、紀州男は絶命していた。シャキは怪物のような頭にとりつき、鼻こぶにテガタ庖丁をふるった。血が滝のように噴き出し、海は朱に染った。鯨神は死んだがシャキもひん死の重傷だった。砂浜で寝棺に入ったシャキは鯨神と対峙した。そこで彼は初めて子供の父が紀州男で、自分を助けるために、あんな無謀なふるまいに出たことを知った。夕陽が海を染めるころ、シャキの最後が迫った。何よりも鯨神を愛したシャキは、自分が鯨神に変身したと感じた……。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1962年
製作国 日本
配給 大映東京
上映時間 100
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