「恋文〈1985年〉」(1985)

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ある日、夫が昔の恋人が余命いくばくもないと知り、妻と子供を捨てて、かつての恋人のためにいちずに尽くす。一見わがままに見える夫の行動は、男の甘えを持つ萩原健一が演じているため映画的虚構として成り立っている。捨てられる妻を演じる倍賞美津子は、バイタリティーと大いなる母性愛を持つ女として登場。出色の演技を見せ、この年の女優賞を総ナメにした。

あらすじ

竹原郷子33歳。女性雑誌の編集部につとめるキャリアウーマン。夫の将一はひとつ年下で中学の美術教師をしており、二人の間には優という一人息子がいる。その将一がある朝突然、女性からの手紙を残して家出した。手紙の差出人は田島江津子、将一のかつての恋人だったが今は白血病に犯されあと半年の命だという。将一は、身よりのない彼女が死の時を迎えるまで自分の全てをかけて看病しようと、学校もやめた。郷子は憤然とした。彼女の境遇には同情するが、なぜ学校をやめ、家出までしなければならないのか。じゃあ私と優はどうなるの?数日後、郷子は将一に乞われ、従姉という立場で江津子を見舞った。二人はなごやかに談笑し、将一という男を間に奇妙な友情が芽ばえ始めた。その夜、郷子は息子に「長く生きられるお母さんは、死んでいく江津子さんのためにお父さんを半年貸してあげるの」と説明した。そうは割り切ったものの、夫はもう戻ってこないかも知れないという不安におびえる毎日が始まった。その夜、郷子は胸の痛みに耐え切れず昔の恋人神谷哲史を訪れ、身体を開いた。忍耐が限界に達した郷子に追い討ちをかけるように将一が離婚話を持ち出した。元気なうちに結婚式だけでも挙げさせたいので離婚届けにハンを押してくれ……。郷子の怒りは凄まじかった。なぜ本当に離婚までしなければならないのか、理解できなかったのだ。翌日、江津子が自殺をはかった。江津子は将一と郷子が本当の夫婦であることを知っていたのだ。二人の女は初めて本心をぶつけ合った。そして郷子は心を決めた。将一と別れよう。今、江津子さんにウエディング・ドレスを着せなければ将一は一生後悔する。将一と江津子の結婚式の日、郷子は離婚届けを差し出した。将一は「俺、こんな凄いラブレターをもらったのは初めてだよ」とつぶやいた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1985年
製作国 日本
上映時間 108
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