「ほしをつぐもの」(1990)

65点65
北野武が「その男、凶暴につき」から一転して、子供に観せるべく企画した昭和へのレクイエム・ファンタジー。上司から繰り上げ定年を持ちかけられたオモチャ・メーカー勤務の中年男が、突如昏睡状態に陥った。生死をさまよいつつ、彼は戦時中の幼児体験の記憶を思い起こし始めていく……。

あらすじ

昭和一ケタ生まれで今や定年間近となった吉田健児は会社帰りのホロ酔い気分で駅に向かう途中、TV番組の女性レポーターに声をかけられた。彼女のインタビューに快く応じた健児は仕事場に案内し、自らの生いたちを語るがその時突然健児はバッタリ倒れこんだ。病院へ運ばれた健児は気を失ったまま、過去の記憶の深い霧の中をさまよっていた。昭和20年3月、小学生の健児たち6名は疎開先の長野の寺から両親や兄弟のいる東京をめざして脱走した。空腹と疲労、そして恐怖の極限状態の中で、三日間ただひたすら山道を歩き続けるそんな健児たちを救ったのは、猟師らしき山の男だった。一度は子供たちを寺へ帰そうとしたが、健児の必死な叫びに、東京行きを承知してくれたのだった。一見ガラは悪いがどこか暖かみのあるおじちゃんに子供たちはすぐ心を開く。こうして子供たちと山のおじちゃんの旅が始まった。殺伐とした現実の中で忘れかけていた夢や希望をおじちゃんは生きる術とともに思い出させてくれたのだった。そして、そんな楽しい旅も長くはなく、別れの日がやってきた。川を越えればもう東京。つらい現実を見たくないと泣きじゃくる子供たちだったが、健児はたとえ何が待っていようと東京へ帰ると告げた。そんな子供たちに満足げなほほえみを送り、おじちゃんは霧と山の縁の中に消えていった。いかだで東京へと川を下る子供たちは、東京の空が空襲で真赤に染まっているのを見上げる。その時、B29一機がいかだめがけて飛来し、機銃掃射を浴びせた。悲鳴を上げて川へ飛びこむ子供たち。その瞬間、健児の意識は急速に現在へと引きもどされた。病室で健児の閉じた瞳から涙が流れおちた。2週間後、まだ右半身にしびれを残す健児は家族に支えられ、レポーターやカメラマンと共に思い出の川辺へやってきた。その時、健児の目に静かにほほえみかけるおじちゃんの姿が映っていたのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1990年
製作国 日本
配給 北野アソシエーション
上映時間 105
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