「(秘)色情めす市場」(1974)

86点86
華麗なる様式美の傑作「(秘)女郎責め地獄」を手掛けた田中登が、モノクロ=ドキュメンタリー・タッチで一人の娼婦のしたたかな生き方を描く。釜ヶ崎の旧赤線地帯を舞台に展開する、19歳の貧しくも心優しい娼婦・トメと周囲の人々との交流。トメと客を取り合う母親、彼女に頼まれトメを脅すダメヤクザ、会社の金を使いこみヤクザと一緒に無理心中する男女、飛べないニワトリに絶望し首を吊るトメの白痴の弟、強盗殺人犯にそっくりの不思議な男。そんな人間関係を経て、トメはこの地で生き抜く決心をする。圧巻は、ラスト近くトメと結ばれた弟がニワトリを手に通天閣に登り、大阪の街々を展望するところ。ここから映画はカラーとなる。

あらすじ

十九歳のトメは、ドヤ街の近くで客をひく売春婦である。トメの弟の実夫は生まれながらの知的障害者で、年中、家でゴロゴロしている。母よねは、四十歳を過ぎた現在でも売春婦をやっているが、あふれることか多い。小料理屋「おそめ」では裏二階で、客に女を抱かせているが、トメに辞められて以来、収入が減ってしまったために、地廻りで“大人のオモチャ屋”をまかされている浅見に頼んで、トメに喝しをかけるが失敗してしまう。ある日、トメは手配写真の中にあった強盗殺人の顔にそっくりの男、寺坂に会って以来、彼に興味をもった。寺坂と同じボロ・アパートの住人、斉藤と文江は共稼ぎだが、正式の夫婦ではない。斉藤は会社の金を使い込んでしまった。思い余った文江は浅見に頼んで「おそめ」で働くことにした。銀二はよねの情夫で時折りトメの家にやって来る。ある日銀二は、よねの留守にやって来て、トメに金を払い二人は寝た。数日後、これがバレて母娘喧嘩になるが、後の祭り。ところが数日後、連れこみ旅館からの連絡で「年増はアカン、もっと若い娘」ということでトメが行ったが、そこにいた年増というのがよねだった。収まらないのはよねで、眼を吊り上げて旅館を飛び出し、焼酎をガブ飲みして大暴れ。数日後、久しぶりに家に帰ったトメは、よねがいるので、一瞬ギクリとするが、よねは弱々しい声で言うのだった。「お前に頼むしかないんや、どないにもならへん。堕ろそうと思ってるうちに、もう五ヵ月になってしまっとんのや」「うちらみたいに生んだらエーヤンか、そんなアホなこと知らんでェ」「お前らも生むんじゃなかった。金がないばっかりに」「生んで貰って迷惑しとんのは、こっちゃでェ!実夫、よう聞いときィ」「なンやてェ! このド阿呆!」「人でなしは生まれたときからや」……。トメはプイと外へ出ると、いつものように客ひきに精を出すのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1974年
製作国 日本
配給 日活
上映時間 83
映倫 R18+
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