「春婦傳」(1965)

60点60
同じ原作を映画化した谷口千吉の「暁の脱走」と比較され、公開当時は失敗作の烙印を押された不運な作品だが、時を経て清順再評価の気運とともに、この映画も見直されてきた。撮影当時は中国と国交がなく、御殿場の広野に中国の山脈を合成したという清順映画の中で珍しく特撮を多用した作品。激戦下で傷ついた男と塹壕の中で横たわり、空を見上げる女の目に砲火が花火のように美しく映えるシーンに、清順独特の映像美が見られる。第二次大戦中の天津、気性の激しい売春婦の春美は、副官の当番兵をしている三上に惹かれる。副官に言いなりの三上を反抗させようと春美は三上をけしかけ、二人は肉体を交わし合う。だが、それを知った副官は三上を最前線へと送った。一時は八路軍に捕えられた三上は無事に帰隊するが、軍法会議にかけられ……。宣伝では膨大な製作費を使った大野心作とうたわれたが、その実「ビルマの堅琴」(1956)の小道具の残り物を使うなど苦労があった。“日活流れ者“の清順らしいエピソードだ。

あらすじ

中国北部の大荒野を、慰安婦の一団が運ばれていた。その中には、天津の売春婦宿で、日本人友田とめぐりあって以来、その愛を裏切られた娼婦春美も入っていた。春美は友田を忘れるため、自分からこの慰安所を希望したのだった。山間地にトラックがやって来た時、日本兵の中に三上上等兵の美しい瞳を見て、春美のすさんだ胸はやさしくゆすられた。その夜から春美は、七人の仲間たちと千人の兵隊を相手にするのだった。最初の男成田と名のる中尉にもて遊ばされた春美は、荒っぽい男の腕の中で友田との愛欲の日々を思い出し、成田を憎みながら悶えた。しかし、三上が成田の当番兵だと知った時、春美は愕然とした。春美は、真面目な三上をいつか自分のものにしようと愛情の炎をもやした。ある夜、成田が急用で司令部に行った後、春美は三上をひき入れた。春美の愛に負けた三上は、自責の念にかられた。この県域から数十キロ離れた分遣隊が八路軍の攻撃を受けたどさくさに、かねてから反軍思想を抱いていた宇野が、脱出した。一方三上は、春美との関係を上官にみつかり、上官の女をとった三上は、営倉入りとなった。そして春美もリンチを加えられた。がその時、県域は八路軍の夜襲にあい、三上は春美と共に八路軍に連れさられ、手厚い看護を受けた。だが再び県域に連れ戻された二人は、厳重に隔離され、部隊の体面を重要視した成田は、三上を殺そうと企てた。全てに裏切られた三上は、春美に手榴弾を用意させた。一つの手榴弾を手に、絶望した三上は、轟然たる音と共に命を断った。三上の傍に春美の死体がすがりつくように横わっていた、三上は戦病死、春美は黙殺されていた。唯、春美の同僚たちが薄幸な春美の思い出に涙するのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1965年
製作国 日本
配給 日活
上映時間 96
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