「「されどわれらが日々」より 別れの詩」(1971)

100点100
昭和39年に芥川賞を受賞、青春バイブルといわれた柴田翔の『されどわれらが日々―』の映画化。互いに愛し合っていると信じている二人に疑問が芽ばえて……。男と女の真の愛情とは何かをテーマに若者の苦悩を描いた一編。小川知子が優れた演技勘をみせて好演。作品中、手紙がとても効果的に使用されている。

あらすじ

太平洋商事のタイピストである斉藤康子は、優しく思いやりのあるエリート官僚の山口伸夫との結婚を秋に控えた婚約期間を送っていた。それは誰の眼から見ても理想的なカップルとして映る平和で楽しい日々だった。一方、康子の同僚である岡島京子は、妻子ある男福井と激しい恋愛関係にあった。それは、康子と伸夫の安定した関係とは対象的な、せっぱつまったものだけに、康子には強く美しい愛に見えた。そんなある日、康子は、学生時代に同じ大学で学生運動のリーダーであった安部の自殺を知った。彼が死の場所として選んだ余呉湖は新緑の林に囲まれた静かな湖である。そして康子と安部が初めて愛情を確認し合った場所でもあった。康子は、安部の純粋さと若々しい情熱に魅せられて愛したのだが、彼が運動に挫折し、仲間を裏切った時、「卑怯者」の声を残して別れた。康子の心を乱したものは、遺書に書かれた「俺は卑怯者だ」という言葉だった。その頃、あれ程激しく愛し合っていた京子と福井の関係は、福井の妻の出現によって破局を迎えようとしていた。しばらく後、会社をやめ、東京を去った京子の手紙には「あらゆるものは茫漠たる彼方に消えて逝く……では、あんなに愛し合った愛とは……この世にあるものは時の流れだけ……」と書かれてあった。このふたつの事件は、康子に男と女の愛についての疑問を呼び起こした。“男と女が愛し合っているとしても、それはある一部分に触れているに過ぎないのではないだろうか”その気持を伸夫に訴えても、彼女が近ずき得ない彼の過去の残像のようなものが康子をひるませた。伸夫の過去。一枚の海をバックにした水着姿の女の写真。その女、葉子は伸夫を激しく求めたが、決して心をのぞかせない伸夫に絶望して自殺した。伸夫は、この事件を語りながら、この青春も時の流れとともに消え去る過去だといいきるのだった。伸夫のアパートから駅にたどりついた康子に大きく激しくのしかかる白い海、伸夫と葉子の幻影に体を押された康子は走り込んできた電車の影に消えた。命はとりとめ、病床にふす康子に対する伸夫の優しい看護。しかし、康子の心は重かった。怪我がなおった康子は、足を引きずりながら伸夫のアパートに行き、いつものように食事をとり、愛情を交した。翌朝、アパートで夜を明かした康子は部屋に置手紙を残し、上野駅へとタクシーを急がせた。「東北のある高校で、英語の教師を求めています。さようなら、伸夫さん。今お別れするのは、あなたと私の本当の意味で再び会うそのためかも知れません。あなたが、あなたのみが私の青春でした」。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1971年
製作国 日本
上映時間 105
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