「風の歌を聴け」(1981)

【DVD発売中】

63点63
村上春樹の群像新人文学賞受賞作を大森一樹が映画化した青春映画。大学生の僕は夏休みに帰郷し、毎晩、友人の鼠とジェイズ・バーでビールを飲んで過ごす。ある日、僕は飲み過ぎて意識をなくしてしまった左手の小指のない女の子と知り合うのだった……。原作にあるどこか空虚で無機質な味わい、そこに漂うロマンチシズムを大森は映像化しようとしているが、指からこぼれ落ちたような印象を受ける。ただ、都会派の青春映画の登場という意味では、まさにニュー・タイプの作品だ。

あらすじ

ドリーム号で神戸までと言うと、受付の男は怪訝そうな顔をした。今、東京から神戸まで行くバスはない。十年前の夏休み二十一歳の“僕”は神戸、三の宮駅前をドリーム号から降りた。僕は昔馴染みの「ジェイズ・バー」に入って行くと、ジェイは「お帰り、友だちが待ってるよ」と言う。指さす方を向くと「春休みからずっと待っていたんだ」と酔った“鼠”がフラついた足どりでカウンターにやってきた。ビールを飲んで再会を祝う二人。僕と鼠の出会いは、二人が鼠の運転する車に乗っていて横転したときだ。怪我一ツなかったツキを大切にしようと二人はコンビを組んだ。鼠の家は大金持ちで、彼は今、大学を退学している。数日後、僕はジェイズ・バーで飲み過ぎて倒れている女を家まで送って行った。翌朝、女は同じ部屋にいる僕に「酔った女に手を出すなんて最低」と言う。「何もしていない」との僕の言葉をてんで信じない。僕に放送局から電話が入った。DJが言うには“ビーチ・ボーイズ”の「カリフォルニア・ガールズ」を僕にプレゼントのリクエストした女の子がいると言う。高校時代、クラスメイトにそのレコードを借りて返していないことを思い出した僕はレコード店に入った。その店にあの女がいた。女と僕は次第に打ちとけていく。僕はかつて三人の女と寝たことがあり、その場面を思い出した。女には小指がなく、それが双子の姉と唯一の区別になっていると言う。父を憎み、金持ちを嫌う鼠は、8ミリ映画を作っている。夏休みが終りに近づく頃、鼠の様子に変化が現れてきた。ジェイは「みんな帰る所があるけど、鼠にはそんな場所がないんだ」と言う。夏の終り、それは僕には青春の終りのような予感がする。その秋、鼠から「土掘り」を描いた8ミリが送られてきた。十年後の今、僕はジェィの店に行くが、そこは誰もいない廃虚となっていた。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1981年
製作国 日本
配給 ATG=シネマハウト
上映時間 100
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