「涙」(1956)

90点90
厳しい現実のなかで引き裂かれていく初恋と新しい生活への意志を描いて、喜びと哀しみが胸をいき交う青春編。日本楽器の女工、志津子と同僚の事務員、雄二は互いに愛し合い結婚を願う。しかし、志津子の家族の過去の汚点を雄二の肉親が見とがめて、二人の間は遠のくばかり。そんな時、志津子に見合い話が……。

あらすじ

浜松市、日本楽器の女工山崎志津子は、同じ会社の事務員磯部雄二と、お互に好意以上のものを感じていた。志津子の父は、彼女がまだ幼い頃、勤め先の信用金庫の使い込みで逮捕され、その後は田舎芝居でしがない稼業を続けていたし、母は世間の指弾に耐え得ず自殺、現在は父の弟春吉が養子に行った理髪店春日軒に下宿している暗い青春。ただ一人の兄信也も、渡り鴉の作業員仕事で酒場女の道子と関係したりしている。他方、春吉の妻きみは、長女むつ子の婿取りには志津子を早く片附けねばと焦っていた。雄二は恋人を家人に見せようと家に誘ったが律義な雄二の肉親は志津子の父や兄のふしだらさに真向うから反対する。雄二はその気持に拘って志津子に愛を打明けられない。帰途彼女は久しぶりに兄信也に会い、兄らしい思いやりに肉親の良さを感じる。雄二の兄一郎が、きみに弟と附合うなと捨てぜりふを残したりしてから、志津子の見合話は急速に進む。思いあまった彼女は弁天島の芝居小屋に老父を訪ねたが、顔を垣間みただけで逃げるように帰った。ある日、志津子は叔母と連れ立ち、郊外の寺へ見合に赴いた。相手は住職の甥で守という青年。物静かな態度の彼に、志津子は日頃忘れていた温かさを感じる。決心を固めるため志津子は雄二を訪れた。彼は結婚して上京すれば何とかなると言ったが、彼女の見合結婚への決意を知り、結婚の贈り物にと浜辺の貝殻を記念に手渡す。東京に移った守と志津子のサラリーマン生活は質素だが温かった。だが志津子は針箱の片隅にある貝殻を見るたび、雄二の思い出に心がうずく。彼女の誕生日に銀座へ出た夫婦は思いがけず雄二に出会う。その夜、雄二こそ貝殻の人と知りつつも現在の生活を倖せにしようという夫に、志津子は涙と共に、貝殻を遠くの海に捨ててきてと頼むのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1956年
製作国 日本
配給 松竹=松竹大船
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