「稲妻〈1952年〉」(1952)

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84点84
林芙美子の同名小説を、田中澄江が脚色した成瀬巳喜男=高峰秀子コンビの名作。4人の子供の父親がみな違うという複雑な母子家庭で、母と異父兄姉たちの醜さに愛想をつかした末娘が、家を出て自立する過程を物語の骨子としている。作者はすべての登場人物を肯定も否定もせずありのままに描いており、俳優たちの好演も相まって、類型に属さない生身の人間の存在感が鮮烈に迫ってくる。バスガイドとして働くヒロインを映した冒頭シーンでの車窓からのぞく風景をはじめ、東京という都市の息づかいを捉えている点でも出色で、娘の実家のある下町と新居の世田谷とは見事に描き分けられている。

あらすじ

清子は観光バスの案内嬢をしているが、次姉の光子も長姉の縫子も結婚している。この三人と兄の嘉助とは、母おせいが腹をいため子であったが、四人とも父がちがっていた。縫子が清子に両国のパン屋の綱吉との縁談を持って来たが、清子には縫子夫婦が、それを種に金儲けのうまい綱吉を利用しようとしている腹が見えていやだった。次姉の夫呂平が急死するが、その後に妾のリツと子供が残されていたことがわかった。光子は泣くに泣けないような気持で、綱吉の新しくはじめた渋谷の温泉旅館へ手伝いに行くが、そこへ縫子は女房気取りでいりびたってしまい、無能な夫の龍三は仕方なくおせいの許へころげ込んで来るのだった。それでも綱吉は図々しく清子を追いかけていたが、彼女がおせいの許を出て、杉山とめの家に下宿して一人の生活をはじめると、自分の望みに見込みのないことを悟り、嘉助の就職の件をご破算にしてしまうような男だった。光子は呂平の保険金がはいると喫茶店をはじめるが、綱吉はその光子の許へも旦那然とはいり込んでしまうのだった。しかし清子はとめの家の隣家国宗周三とその妹のつぼみと知り合いになり、清らかな生活雰囲気にほっとした気持になるのだった。ある日おぬいが清子の下宿へたずねて来た。縫子と綱吉を間にしてもつれた光子が行方不明になったという。清子になぐさめられ、彼女の虎の子の貯金をもらったおぬいは、折からの稲妻に、稲妻のきらいだった光子はきっと帰ってくるよと、家路へ急ぐのだった。 【キネマ旬報データベースより】
製作年 1952年
製作国 日本
上映時間 93
カテゴリ 人間ドラマ
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